−亜流! 便乗! 自称「続編」のインチキ邦題十番勝負−

 レンタルビデオ屋に行くと、ありますねー。「氷の誘惑」「トータル・スキャナー」「トップガンズ」「羊たちの沈没」……。大ヒット映画の題名を勝手にパクった邦題を無関係の映画に付けた作品が(まあ、最初から内容がオリジナルのパロディという例もありますが)。今でこそビデオにお株を奪われてしまいましたが、そんなものの無かった時代、大ヒット映画があれば、それに便乗して同じような内容の作品や、同じような邦題を勝手に付けた作品をいち早く放送するのは、テレビ屋の宿命でした。ここでは、そんなインチキ・バッタ作品をご紹介いたします。

一番勝負・エクソシストもどき 「ブルー・ファイア」

 日頃の行いの悪かった神父(ジェームズ・ファレンティノ)が交通事故で死亡しますが、そのままでは昇天かなわず、地上に戻って悪魔と戦うことを命じられます。ある学園でオカルト事件が続発、そこに登場した神父は早速事件を究明、犯人を捜し出します。悪魔に取り憑かれた女は「エクソシスト」のリンダ・ブレアのような顔をして呪詛の言葉を吐き、口から釘の山を噴出させてきますが、神父によって退治されます。そして戦い終わった後、神父も姿を消していました。はい、悪魔祓い師を主人公にしたテレビシリーズのパイロット版の一本でした。

二番勝負・キャリーもどき 「超能力少女の復讐」

 思春期を迎えたデブでのろまなカメのような少女が、突然超能力を得ます。最初はいじめっ子に復讐するぐらいでしたが、しだいにエスカレートし、自分の気に入らないものをすべて超能力で意のままにしようとします。それに気づいた母親が懸命に説得、母娘の対決となりますが、最後は母親の愛情に負けた娘が泣き崩れ、二人で抱擁してよよよと泣いて終わりです。

三番勝負・パニック映画もどき 「大洪水・脱出パニック死の谷」

 人里離れた農家に済む夫婦と幼い息子一人。ある日父親が狂犬病にかかり、彼は自らの体を柱に鎖で縛り付け、逃げようとするであろう自分の言うことを絶対に信じて鍵を外してはならないと厳命します。妻は町の方へ医者を呼びに行きます。その後付近の水位に異常が生じたことを知った父親は、大洪水が家を襲うことを察しますが、もはや息子は信じてくれません。やがて大洪水が家を襲いますが、すんでのところで父親は息子を連れて脱出に成功するのでした。

四番勝負・スター・ウォーズもどき 「銀河宇宙巨大戦艦・スターシップSOS」

 SF大作もどき西の横綱が「UFO大遭遇」なら、東の横綱が「スペース・ウォーズ」と本作。銀河征服を企むザース軍団に、女海賊キャロライン・マンローちゃんが挑みます。彼女は相棒のロボットと共に、アマゾネス軍団、巨大ロボットなど戦い、最後は王子様(デビド・ハッセルホフ)と組んで、敵の母艦にきらびやかな巨大宇宙戦艦を体当たりさせて壊滅させます。ストーリーも特撮もチープながら、いかにも二番煎じ臭さが漂うテレビ向きの作品で、ここだけの話、本家「スター・ウォーズ」より私は好きです(笑)。

五番勝負・アマゾネスもどき 「最後のアマゾネス」

 もはやアマゾネス族を離れて、女だけの武闘集団が出てくれば、なんでもアマゾネスです。核戦争後の未来、極端な水不足の世界では、井戸を握って人間を奴隷のように働かせる権力者グループと、彼等に抵抗する女ゲリラグループがいました。新しく発見された水源をめぐって、権力者グループ、女ゲリラグループと彼女たちに加勢するリトルな人たちの戦いとなります。激闘が終わった後、お約束のように空から雨が降り出すのでした。ちなみに本作は、木曜洋画劇場「最後のジョーズ」に続く、「最後の」シリーズの一編です(笑)。

六番勝負・残酷ドキュメントそのもの 「新グレートハンティング」 「新・カタストロフ」

 片や「'84」が登場する以前の「グレート・ハンティング」シリーズ、片や「カタストロフ・世界の大惨事」の企画ものです。皆さん「続」だの「新」だの「PARTU」だの適当な飾りを付けて新作のように見せかけていますが、内容は変わらないといいますか、たま〜に新ネタがポチッと加えられるレベルのものです。毎回のように観ては、ライオンが人を喰う場面や、サンパウロの高層ビル火災、ヒンデンブルグ号の炎上などを見せられて、「またこれか」と思った方も多いでしょう。まあ、事故や災害場面をさんざん興味本位に扱っといて、最後に人命救助シーンを申し訳程度にくっつけて、「これは人命の尊さを訴える番組です」とぬかす某報道ドキュメント番組よりは好感が持てますが。

七番勝負・青い体験もどき 「青い経験」

 思春期真っ盛りの少年のところに、遠くの爺さんの再婚相手がやって来ます。はい、もちろん再婚相手はピチピチのグラマー色香女で、少年もその兄も父親もメロメロになってしまいますが、少年は筆おろしをしてもらうと共に真実の愛を教えられ、彼を慕うチンクシャ少女と仲良くなり、義理の婆さんは爺さんのもとに旅立っていきます。ありがちでたるい展開の映画です。

八番勝負・ザ・デイ・アフターもどき 「スレッズ」

 原爆投下後の社会を描いた、イギリスBBC放送の製作作品です。この作品が「ザ・デイ・アフター」と大きく違うのは、スターが出ていない点と、物語の主役の不在という点でしょうか。戦争によってイギリスに原爆が投下されますが、派手な特撮シーンもなく、その後廃墟で淡々と暮らす難民達の姿が描かれ、原爆による気候異変による低温時代やそれによる食糧危機が描かれます。トリに浮浪者の少女が登場、食糧の奪い合いが原因で少年に犯され、忙しさと無気力さで誰も看護してくれない野営病院に出向いて一人で出産に立ち向かい、「生まれるー!」と絶叫する顔がアップになって映画は終わります。あまりにも前衛的で、私にはチンプンカンプンでした。まあ、監督は「ボディガード」のミック・ジャクソンなので、常人のセンスではその良さを理解できないのでしょう。

九番勝負・ランボーもどき 「ファイナル・ミッション」

 題名からは「ファースト・ミッション」のパクリかと思ってしまいますが、中身は「ランボー」ものです。といっても「ランボー者」ではありません。町の悪党共に妻子を爆殺されたベトナムの帰還兵が、機関銃を持って悪党を殺しまくり、州兵に追われて山に逃げ込みます。超人的な強さを誇る彼に手を焼いた警察は、彼の元上司を呼び出して説得に当たらせます。本家と違うのは、この後投降しようとする主人公の前で元上司が射殺され、怒り狂った主人公が再び戦闘を開始したところで映画が幕を迎えるところでしょうか。そのほか「サンダー」だの、「コマンドー」もどきの「コマンドー軍団」だの、この手のB級アクションは多数放送されました。

十番勝負・ローズマリーの赤ちゃんもどき 「続ローズマリーの赤ちゃん」

 オリジナルで生まれた赤ん坊・エイドリアンのその後を描いた作品です……って、これは珍しくきちんとした続編ですね(アイラ・レヴィンが関係しているかどうかはさておき)。赤ん坊を守ろうと逃亡するローズマリー(パティ・デューク・アスティン)ですが、まんまとエイドリアンは奪われ、彼は何も知らされずに青年になります。そして自分の正体を知ってダミアンのごとく悩みますが、最終的に悪魔崇拝主義者の女に薬を盛られて体の自由を奪われて犯され、再び彼の子供もまた、悪魔崇拝主義者達の手に落ちるのでした。

番外勝負・城みちるもどき 「イルカに乗った少年」

 イタリアの気性の荒い女漁師のソフィア・ローレンが海底でイルカに乗った少年像を見つけたところから、さまざまな男達と知り合って……って、「島の女」を勝手に改題して放送。そこまでやるかぁぁぁっ!

 以上は氷山の一角で、そのほかにも「若き日のJFK」「必殺エクスタミネーター」「スティール・インフェルノ」「課外スクール」といったうさんくさい作品が多々ある半面、「暗殺・サンディエゴの熱い日」「第二のカサンドラ・クロス事件 細菌兵器に襲われた街」といった秀作もあるのですから、バッタ作品も捨てがたいものがあります。関係者の方々には、ぜひ「新スピード」とか「ジュラシック・ワールド」とか「フレンチ・ペイシェント」とか「ときめきのメモリー」とか、怪しい作品を期待したいところです。


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